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骨密度検査はなぜ腰椎と大腿骨で測る?部位の違いとDXA法が標準とされる理由

骨密度検査はなぜ腰椎と大腿骨で測るのでしょうか。国際標準のDXA法、骨折予防で重要な理由、前腕DXA・MD法との違いを解説。アトラスの撮影時間は約90秒です。

骨密度検査の装置と検査台に横たわる人のイラスト

骨粗鬆症の診断に欠かせない「骨密度検査」。

骨密度は、腰椎(腰の骨)、大腿骨近位部(太ももの付け根)、前腕(腕の骨)など、さまざまな部位で測定することができます。

しかし、骨粗鬆症診療で国際的に標準とされているのは、腰椎と大腿骨近位部のDXA(デキサ)検査です。

なぜ、この2か所なのでしょうか?

私は患者さんに骨密度検査について説明するとき、いつも大切にしている考え方があります。

それは、「骨密度を測る本当の目的は、骨折によって日常生活が大きく変わってしまうことを防ぎ、いつまでも自分の足で歩ける未来を守ること」です。

今回は、腰椎・大腿骨DXAが重視される理由と、前腕DXAや手のMD法との違いについて、医学的な根拠を交えながら分かりやすく解説します。

1.腰椎・大腿骨DXAは、世界的に推奨されている標準検査

骨密度を測定する方法はいくつかありますが、現在、骨粗鬆症診療の中心となっているのがDXA(デキサ)法です。

DXA法は、少量のX線を使用して骨密度を測定する検査です。

国際臨床骨密度学会(ISCD)の2023年公式見解では、腰椎と大腿骨近位部の両方で骨密度を測定することが推奨されています。英国の骨粗鬆症診療ガイドライン(NOGG)でも、大腿骨頚部のDXAが骨折リスク評価において重要な位置を占めています。

日本の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版」でも、腰椎・大腿骨近位部のDXAが基本です。

つまり、腰椎と大腿骨近位部の骨密度を測定することは、日本だけでなく世界的に確立された骨粗鬆症診療の基本なのです。

この2か所には、それぞれ異なる特徴があります。

腰椎DXA ― 骨の変化や治療効果を捉えやすい

腰椎には「海綿骨(かいめんこつ)」と呼ばれる組織が豊富に含まれています。

海綿骨は骨代謝の変化が比較的表れやすいため、腰椎DXAは骨粗鬆症の診断や、薬物治療による骨密度の変化を評価するうえで重要です。

大腿骨近位部DXA ― 将来の骨折リスクを知るために重要

大腿骨近位部の骨密度は、将来の大腿骨近位部骨折の危険性を予測するうえで、特に重要な指標です。

大腿骨頚部の骨密度は、国際的な骨折リスク評価ツールであるFRAXにも用いられています。

腰椎と大腿骨では骨の構造や加齢による変化が異なるため、両方を測定することで、骨の状態をより適切に評価できます。

2.なぜ腰椎と大腿骨が重要なのか? 診察室で伝えたいこと

ここからは、私が日々の診療で特に大切にしている考え方です。

骨粗鬆症による骨折は、手首、肩、背骨、骨盤、大腿骨など、さまざまな場所に起こります。もちろん、どの部位の骨折も予防することが大切です。

しかし、その中でも特に注意したいのが、背骨の骨折(椎体骨折)と、太ももの付け根の骨折(大腿骨近位部骨折)です。

この2つの骨折は、その後の生活の質(QOL)や日常生活動作(ADL)、特に歩行能力や生活の自立に大きな影響を及ぼすことがあるからです。

大腿骨近位部骨折 ― 歩けなくなるリスク

大腿骨近位部は、私たちが立ったり歩いたりするときに、体重を支える重要な部分です。

高齢者が転倒してこの部分を骨折すると、多くの場合、自力で立つことや歩くことが困難となり、入院して手術を受けることになります。

手術後にはリハビリテーションを行いますが、必ずしも全員が骨折前と同じ歩行能力を取り戻せるわけではありません。

それまで一人で買い物や散歩に出かけていた方が、骨折をきっかけに杖や歩行器を必要とするようになることもあります。さらに、活動量の低下によって筋力や体力が落ち、介護が必要になる場合もあります。

大腿骨近位部骨折は、単に骨が折れるだけではなく、その後の自立した生活を大きく変えてしまう可能性のある骨折なのです。

背骨の骨折(椎体骨折) ― 痛みや姿勢の変化が日常生活に影響する

背骨も、骨粗鬆症によって骨折しやすくなる代表的な部位です。

骨が弱くなると、尻もちをつくなどの軽い衝撃や、日常生活の何気ない動作で、背骨がつぶれるように骨折することがあります。これを椎体骨折、あるいは圧迫骨折と呼びます。

保存治療で改善することも多いですが、強い痛みが長引いたり、骨の変形が残ったりする場合もあります。骨折を繰り返すことで、背中が丸くなったり、身長が縮んだりすることもあります。

こうした変化は、立つ・歩く・家事をするといった日常生活の動作に影響し、生活の質を低下させる原因になります。

骨折する前に、骨の状態を知ることが重要

ここで、私が特に強調したいことがあります。

骨折すると、手術や入院が必要になったり、その後の歩行能力や自立した生活が損なわれたりする可能性がある。だからこそ、骨折する前に骨の状態を調べ、必要なら早い段階から治療することが大切なのです。

腰椎と大腿骨近位部のDXAは、将来の骨折リスクを評価するための科学的な根拠が豊富な検査です。また、背骨と大腿骨近位部は、実際に骨折すると生活への影響が大きい部位でもあります。

なお、腰椎DXAで測定する骨と、実際に骨折する背骨の位置が必ずしも一致するわけではありません。腰椎DXAは、背骨を含む全身の骨折リスクを評価する重要な指標の一つです。

骨粗鬆症は、骨折するまで自覚症状がほとんどないことも珍しくありません。だからこそ、症状のない段階から骨の状態を把握し、骨折予防につなげることが大切なのです。

3.骨密度検査は痛い? 撮影時間は約90秒

「骨密度検査は痛いのかな?」「時間がかかるのかな?」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

当院では、GEヘルスケア製のDXA装置「PRODIGY Fuga」を使用して、腰椎と大腿骨近位部の骨密度を測定しています。

検査は台の上に仰向けに横になっていただくだけで、身体への負担が少なく、短時間で行うことができます。

腰椎と大腿骨近位部の撮影時間は約90秒。短時間で精度の高い骨密度測定が可能です。

検査自体に痛みはありませんが、測定時には姿勢の調整が必要です。腰や股関節に痛みがあり、仰向けの姿勢がつらい場合は、検査担当者にお伝えください。

なお、実際の検査全体の所要時間には、検査前の準備や体位の調整などが加わります。

DXA法は使用するX線の量も非常に少なく、一般的なレントゲン撮影よりも被ばく量が低い検査です。

短時間で、身体への負担を抑えながら、将来の骨折リスクを評価するための大切な情報を得られる検査です。

4.骨密度が低下していたら、どうすればいい?

骨密度検査で重要なのは、単に「数値が何%だったか」を知ることではありません。

その結果を、将来の骨折予防にどう生かすかです。

骨密度が低下している場合は、年齢、過去の骨折歴、転倒リスク、持病、服用している薬剤などを総合的に評価します。

必要に応じて背骨のレントゲン検査や血液検査などを行い、骨粗鬆症の原因や骨折の危険性を確認します。

そのうえで、骨折リスクが高いと判断される患者さんには、骨粗鬆症治療薬による薬物治療を検討します。

同時に、食事・栄養、運動、筋力維持、転倒予防などの対策も重要です。

骨粗鬆症の薬物治療は、単に骨密度の数値を上げるためではありません。将来の骨折の危険性を減らし、健康で自立した生活を守るために行うものです。

5.前腕DXAや手のMD法にも、それぞれの役割がある

「以前、別の医療機関で腕や手の骨密度を測定したことがある」という患者さんもいらっしゃるでしょう。

骨密度検査には、前腕DXAや、手のX線画像を利用したMD法などもあります。これらの検査にも、それぞれ特徴と役割があります。

前腕DXAが役立つ場合

前腕DXAは、腰椎や大腿骨に手術後の金属や人工関節があり、通常のDXAで正確な測定や評価が難しい場合などに役立ちます。

また、副甲状腺機能亢進症では皮質骨の骨量減少が目立つことがあり、前腕DXAが重要な情報を提供する場合があります。このような場面では、欧米のガイドラインでも前腕DXAが推奨されています。

手のMD法が役立つ場合

MD法は、手のX線画像を用いて、主に第2中手骨の骨量を評価する方法です。

比較的簡便に実施できるため、骨粗鬆症のスクリーニングや、腰椎・大腿骨DXAを利用できない環境での評価に役立ちます。

測定する部位によって、骨密度の数値は異なる

前腕DXAでは、腰椎や大腿骨近位部よりも骨密度の数値が低く表示されることがあります。

実際に、国内で骨粗鬆症の治療歴がない518名(平均年齢72.3歳)を対象に行われた比較では、次のような結果が報告されています。

測定部位別の平均骨密度(YAM%)

測定部位 平均YAM
腰椎 86.1%
大腿骨頚部 75.1%
前腕(橈骨1/3部) 69.6%

この報告では、前腕の骨密度は腰椎より平均16.5ポイント、大腿骨頚部より平均5.5ポイント低い結果でした。

ただし、これは特定の集団での平均値であり、すべての方に同じ差が生じるわけではありません。

骨は測定する場所によって皮質骨と海綿骨の割合が異なり、加齢や病気による骨量減少の現れ方にも違いがあります。また、YAM値の基準となる若年成人の平均値も部位ごとに異なります。

そのため、前腕の数値が低いからといって、それだけで全身の骨粗鬆症がより重症であると判断することはできません。

大切なのは、検査方法の優劣を決めることではなく、患者さんの状態や検査の目的に応じて、それぞれの検査を適切に使い分けることです。

6.当院が骨密度検査で大切にしていること

当院では、国際的にも標準とされている腰椎・大腿骨近位部のDXAを基本として、骨密度を評価しています。

そして、骨密度の数値だけでなく、これまでの骨折歴、背骨のレントゲン画像による椎体骨折の有無、転倒リスク、全身の健康状態などを総合的に判断し、必要な治療につなげていきます。

私が患者さんにお伝えしたいのは、骨密度の数値の先にある「これからの生活」のことです。

自分の足で歩くこと。買い物や旅行を自由に楽しむこと。家族と一緒に、これまでどおりの日常を過ごすこと。

骨粗鬆症による骨折は、そうした当たり前の生活を大きく変えてしまうことがあります。

だからこそ、骨折してしまってからではなく、骨折する前に骨の状態を知り、必要であれば早い段階から治療に取り組むことが重要です。

骨粗鬆症治療の本当の目的は、骨密度の数値を良くすることだけではありません。骨折を防ぎ、いつまでも自分の足で歩き、自分らしく自立した生活を続けられるようにすることです。

骨密度検査は、その未来を守るための大切な第一歩です。

アトラス整形外科 千駄木リウマチ・スポーツクリニックでは、骨折予防を重視し、一人ひとりの患者さんの状態に合わせた骨粗鬆症診療を行っています。

骨密度検査のご相談・受診について

「最近、身長が縮んできた」「以前、骨密度が低いと言われた」「これまで腕や手の骨密度しか測定したことがない」。このような方は、骨粗鬆症の検査についてご相談ください。

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お問い合わせ:03-3827-1717

初診の方は事前予約または当日受付をご利用いただけます。現在通院中の方の再診は、当日受付をご利用ください。

参考文献・資料

  1. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版
  2. International Society for Clinical Densitometry(ISCD):Official Positions 2023
  3. UK National Osteoporosis Guideline Group:2024 UK Clinical Guideline
  4. 日本整形外科学会:大腿骨頚部骨折
  5. 日本整形外科学会:脊椎椎体骨折
  6. 立入久和:DXA法測定部位(腰椎・大腿骨・前腕骨)による相違とその影響

執筆:アトラス整形外科 千駄木リウマチ・スポーツクリニック 院長(日本骨粗鬆症学会認定医)

※この記事は一般的な医学情報です。症状や治療法は患者さんごとに異なりますので、 個別の判断は診察を受けたうえで主治医とご相談ください。

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